Webマーケティング2021.03.31
目次
こんにちは。[本気ファクトリー株式会社]代表取締役 畠山和也です。Marketing Bankでは、BtoBマーケティングに関する最新情報やノウハウを連載でご紹介しています。
すでに5つのツールの特徴を紹介してきた本シリーズですが、ここでは一般的な機能を軸にしたツールの比較や紹介ではなく、もう少し踏み込んだ情報を届けたいと思っています。
個人的には、MAツールを選定する際には、そのツールがどのような課題を解決するために生まれたものなのか、今後どのような方向性で進むのか等々も理解したほうがいいと考えています。そのツールの根本にあるものを把握しなければ、今の時点では良いとしても、その後、選定したことを後悔してしまうかもしれないからです。本記事が、少しでも皆さんのツール選定のお役に立てることを願っています。
シリーズ6回目は、外資系ツールの「[ハブスポット]」をご紹介します。
※今回のこの連載は特定のツールを宣伝する目的ではなく、かつツールベンダーに取材して得られた情報ではないことを予めご理解いただき、ご覧ください。
ハブスポットの源流
ハブスポットは2006年に、マサチューセッツ工科大学で知り合ったブライアン・ハリガンとダーメッシュ・シャアの2人により、設立されました。インバウンドマーケティング・セールス支援のソフトウェア開発・販売を行う企業で、2005年頃から「インバウンドマーケティング」というキーワードを提唱しています。TechMarketに掲載されている記事「[HubSpot CEO兼共同創業者 Brian Halligan (ブライアン・ハリガン) インタビュー]によるとブライアン・ハリガンは自身のキャリアについてこう語っています。
私はベンチャーキャピタリストをしていました。大企業に成長しようとする小さな企業に投資をしていました。そこでHubSpotのアイデアを思いついたんです。
そういう小さい会社は広告に費やしたり、テレアポをする営業担当者を雇ったり、販売先リストを買ったりするために私たちの出資金を調達していました。<中略>そこで私たちはそういう会社がお客を引きつけるための新しい手法を考えたのです。お客さんの邪魔をせず、サービスに巻き込めるようなまったく新しい手法をね。ベンチャーキャピタリストをした経験から、会社を成長させるのがどんなに大変かを理解して、そこから優れたアイデアを思いついたわけです
つまり、VCでの経験から、企業が成長するための手法として「インバウンドマーケティング」を思いついたわけですね。
しかし、このような中小企業が喜びそうメッセージにもかかわらず、日本での進出には時間がかかりました。2012年にハブスポット提供を行うマーケティングエージェンシーが日本で登場しましたが、ハブスポットはこの時点では日本法人を設立していませんでした。日本でマーケティングオートメーション元年と言われた2014年にはマルケトが先んじて日本法人を設立しましたが、ハブスポットは遅れること2年、2016年に日本法人を設立しました。
価格
ハブスポットではCRMのソフトウェアを無料で提供しています。
価格は「Marketing Hub」「Sales Hub」それぞれのソフトウェアに対して設定されており、どちらも0円から使えるとのことですが、MAとして使うためには「Marketing Hub」を選択する必要があります。また、当たり前ですが、0円ですべての機能が使えるわけではありません。「マーケティングオートメーション」機能が使える「Professional」プランで「コンタクト数1,000件」の場合は月額96,000円からでした。
マーケティングオートメーションツールとして使わずに、メール配信程度であれば「Basic」プランが月額24,000円から使えるそうなのですが、難点は、コンタクト数が1,000件増えるごとに「月額12,000円」加算されるということ。
一般的なほかのMAツールがコンタクト数/リード数(個人情報の数)5,000件程度で最低金額を設定しているのですが、ハブスポットの場合、マーケティングオートメーションとして使わずに、メールマーケティングで5,000件のリードを活用する場合でも、Basicプランでは月額84,000円となり、思っていたより高額になると感じる方も多いでしょう。
顧客データが少ない場合や永久無料のCRMの方の恩恵も受けられるのであればコストメリットがありそうなのですが、MAツール単体で中長期で使い続けることを考えると、予算的に厳しいという企業もいらっしゃるかもしれません。ただ、BtoBの場合は急激にリードが増加することはそこまで多くないので、必要以上に心配するより、自社の状況を見極めてください。
導入事例から見えてくる共通点
日本の事例だけでなく国外の事例も掲載されているので面白いですね。国内の事例は、Webマーケティング支援会社とITのソフトウェアベンダーでの大きく分かれているようで、テレビ会議システムや、コールセンターなどで使われるCTI(Computer Telephony Integration)、イベント管理ツールなどで導入されているそうです。
インバウンドマーケティングという言葉の意味自体が、広告に頼ることなく、自社でコンテンツを用意して、お客様に「見つけてもらう」ことを目指すツールなのですが、自社でコンテンツを用意する手間や、そのコンテンツ単体に対する費用対効果などを求めてしまう日本の企業の多くにとってはハードルが高く、マーケティング活動に積極的な、マーケティング支援会社やITのソフトウェアベンダーのほうが先行事例として多いのかもしれません。
利用中ユーザーの声
私は職業柄、マーケティング担当の方々とお話をすることも多いのですが、ハブスポットに関して以下のような声を聞きました。
「無料で一部機能を提供してくれているのでとっつきやすい」
「国内での活用例が少なく、自社がうまく活用できているかわからない」
「顧客データが増えてくると高額になるので、乗り換えを視野に入れて、顧客データが少ないうちはハブスポットを使うと割り切っている」
まとめ
今回はMAツールの「ハブスポット」をご紹介しました。MAの中でも無料開放している機能があるため、最初の腕試しにちょうどいいツールかもしれません。インバウンドマーケティングに興味がある方で、顧客データがさほど多くない企業でしたら、有力な候補のひとつとなるでしょう。
畠山和也
[本気ファクトリー株式会社]代表取締役
ソフトバンク・リクルートで営業現場・新規事業の立ち上げ、ラクスルなどでWEBマーケティングの実務を経験し2014年独立。「固定客をつくる根雪マーケティング」をコンセプトにデジタルマーケティングのコンサルティングを提供。